アメリカの不良娘・ベッキー VOL. 13

アメリカの不良娘・ベッキー 

離婚って、離婚のこと?

「どうして離婚したの?」とベッキーに尋ねたら、暴走族の一人がすかさず答えた。

「ベッキーはお前に惚れたんだとさ」

続いて他の連中も
「潔(いさぎよ)いじゃ無いか。」

「ベッキーらしいよ。」

「だから今日はベッキーとボンのお祝いなのさ。」

確かに僕は金髪の彼女が欲しいから今までそれなりに行動をしたんだけれど、ベッキーが人妻だという事が分かってからは状況が違ってきたんだよ。ベッキーが人妻だと分かっていたらラブレターなんて渡さないよ〜。

暴走族の連中は、
「ボンとベッキーはこれで晴れて堂々と付き合えるって事じゃ無いか。喜べよ。」

「ま〜、それはそうだけど。」と、俺。

俺はベッキーが人妻だと言うことを知らずにラブレターを書いたのであって、こういう展開になるとは予想だにしていなかったのに、えらい事になってしまった。

もともと楽天家の俺は(もう、後戻りはできないな。え〜い!ままよ。なんとかなるべ。それよりも明日、自家用免許の試験なんだよな、そちらに集中しなければ。)

と、盛り上がっている連中に「サンキュー。でも今日は早く帰らないと行けないんだよ、明日試験があるからさ〜。」と切り出した。

連中は「そうなのか!送るよ。」とその場は収まることになった。

(よかった。ふ〜〜〜〜っ。)

暴走族の一人に空港の宿舎まで送ってもらい、すぐさま翌日の試験に向けて仕上げをするために一人セスナを飛ばした。

オーラル[口頭試問]の復習もした。

「よし、完璧!」

翌日、午後3時からの試験がある飛行場に向けて離陸した。僕が日常訓練を受けている飛行場は田舎にあって、試験官はこんな田舎まで来てはくれない。

だから兎に角、試験のあるユカイアというメジャーな空港へ出向かなければならなかった。ユカイアまで1時間のフライト。

昨日の出来事は一晩寝ることで、頭の中から追い出してあったので、飛行試験は完璧にこなすことができ、オーラルの試験は少しつっかえながらの答えだったが、両方とも合格。

これからは教官の許可無く、いつでも好きなときに、好きなところへ飛んでいけると思うとワクワクしてきた。

試験が終了したのは午後の6時、カリフォルニアでも冬は日が落ちるのが早い。辺りは日没を迎えようとしていた。

(こりゃ帰路はナイトフライトになるな。)

午後7時 僕は帰路に向けて離陸した。

前述の通り僕のホームタウンは田舎なので帰路のエンルートには街がほとんど無い、当日は快晴。満月の夜であった。

帰路のエンルート上には湖がある。琵琶湖より少し小さいくらいの大きさ。その湖上をフライトしているとき湖面に満月が映り、まるで宇宙空間を漂っているような気分だった。

1時間半(向かい風のため)かけてようやく到着。

寄宿舎に戻ると、皆が待ち構えていて「合格祝い」をしてくれた。すでに試験官が学校へ連絡を入れてくれていたのだ。

嬉しかった、しかし、待ち構えていた同僚のなかにベッキーもいた。

急に現実に引き戻された。

(さて、明日からどうしよう)…

楽天家の僕は取り敢えず合格をかみしめることにした。

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